大聖院通信vol.15「お正月飾り」

十二月に入ると、スーパーなどの店頭にお正月飾りが並びはじめる。近頃は、隣に陳列されているクリスマス飾りと張り合っているかのように、オシャレなものや可愛らしいものも増えていると思う。

お正月とは、新しい年の神さま=年神(としがみ)さまをお迎えするための行事である。年神さまは、その年の福徳を司る神さまで、新しい年の穀物の実りをもたらし、私たちに生命を与えてくださる神さまであり、そして、いつも我々を見守ってくださっている祖先のことである。お正月になると、どの家にも新しい年神さまが訪れて、すべてが新しく始まる節目となる、と考えられていたのである。

境内の松
境内の松

  この年神さまをお迎えするため用意するのが、門松やしめ縄などのお正月飾りである。上端を斜めに切った三本の竹と松を組み合わせて作る「門松」は、新しい年神さまを招いてお祭りするための神籬(ひもろぎ)、つまり年神さまが宿る“依り代(よりしろ)”である。また、新わらを左縄になって作る「しめ縄」や「しめ飾り」には、古い年の不浄を断ち、年神さまを清浄な場所にお迎えする、という意味がある。「鏡餅」は、お招きした年神さまへのお供え物である。このように本来のいわれを考えてみると、お正月気分を盛り上げるための単なるデコレーションというワケではないようである。これらのお正月飾りは、まず家の内外をキレイに掃除してから、それぞれ門口や玄関、神棚や床の間などに、さらには水場や火気場など日常生活において大切な場所にも安置する。

 また、お正月飾りには、橙(だいだい)や交譲葉(ゆずりは)等のさまざまな縁起物があしらわれる。

◎橙(だいだい):冬になると果実が橙色に熟すが、春になるとふたたび緑色に戻り、そのままにしておくと木から落ちることなく2~3年は枝にくっついている。このことから「だいだい(代々)」とも呼ばれ、家が子孫代々にわたって繁栄することを願う。お正月飾りでは、ミカンで代用することもある。

◎交譲葉(ゆずりは):ゆずり葉は、新葉が出て生育してから古葉が落ちることから、親が子を育てて家が代々続いていくように見立てて、順調に世代交代がすすんで一家が安泰となり、子孫が繁栄することを願う。

 

◎裏白(うらじろ):シダの葉。枝が垂れることから長寿を願い、葉が左右対称であることから夫婦円満を願う。また、葉は裏を返しても色が白いことから、心に裏が無い=清廉潔白を願う。潔白な心で、夫婦円満に長寿であることを願う。

その他にも、昆布(「よろこぶ」とあてて、めでたいの意)、エビ(エビのように長寿を願う)、柿(「嘉来」とあてて、よろこびが来ることを願う)などが縁起物として取り付けられる。

 

 さて、お正月飾りの飾り付けについて“しきたり”がある。まず、九のつく日(たとえば29日)は「九(く)=苦」に通じるので、苦を飾ることになるから避ける。また、大晦日の31日だと「一夜飾り」になるので、年神さまをお迎えするのに失礼になるので、これも避ける。なるべく早い時期に、できれば28日までに、遅くとも30日には飾り付けをするように心掛ける。どうしても一夜飾りになってしまう場合は、塩で清めてからおこなう、ともいう。

 

 年末は、大掃除やら正月の準備やら、とにかくバタバタと慌ただしい。大聖院では、境内の屋内外の約30ヶ所に飾り付けやお供えをするので、それだけでもひと仕事になる。いよいよ年が押し詰まってお正月飾りを済ませると、新年を迎える気持ちがグッとたかまってくる。

どうぞ良いお年を…!!!(副住職孝善)

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