今年は、干支の午歳(うまどし)にちなんで、“准秩父観音霊場(じゅんちちぶ かんのん れいじょう)”が開帳されます。
横浜市の港北区・都筑区・鶴見区、川崎市の川崎区・幸区・中原区に点在する寺院やお堂・庵など全34ヶ所の札所(ふだしょ)が、古くからの習わしにしたがい、12年に一度、午歳ごとに、観音さまのお開帳をおこないます。
お開帳の期間中はお堂やお厨子の扉を開いて、ご本尊の御手につながる“縁の綱(えんのつな)”を手繰りながらお参りすることによって、参拝者と仏さまとがより深い御縁を結ぶことができる、といわれています。
観音さまは、“観世音菩薩(かんぜおん ぼさつ)”また“救世菩薩(ぐせ ぼさつ)”ともいわれるように、世間の音を観察する、つまり人々の声(音)に耳をかたむけ、慈しみの心をもって救いの手を差し伸べてくださる仏さまとして信仰されています。経典によると、さまざまな救いをもとめる人々の心に応じて、観音さまは33種類ものお姿に変化(へんげ)して我々の目の前に現れる、と説かれています。この33種類のお姿にちなんで、三十三ヶ所の観音札所めぐりがおこなわれるようになりました。
日本における観音信仰の歴史は飛鳥時代にまでさかのぼります。平安時代になると西国三十三ヶ所霊場が開創され、鎌倉時代には坂東三十三ヶ所霊場が、室町時代には秩父三十三ヶ所霊場(のちに三十四ヶ所となる)が創設されました。そして、この西国・坂東・秩父の3つをあわせて全100ヶ所の“百観音霊場”(日本百番札所)として信仰が広まり、巡礼者が参詣するようになりました。しかしながら、遠く離れたこれらの霊場へお参りすることはなかなか容易ではありませんでした。そこで江戸時代になると、これらを模した“写し霊場”が全国各地に作られるようになり、近隣にある手頃な行程の霊場として多くの人々に巡礼の機会を増やし、また行楽的な要素も加わって、たいへん盛んになりました。
“准秩父観音霊場”もこのような“写し霊場”の一つで、その創設は江戸時代中期~後期頃ではないかといわれています。「准」には、なぞらえる・準ずる、つまり“正規のものに倣ってつくる・同等とみなす”という意味があります。
昔は巡礼の人々が参拝のしるしとしてお札を納めたことから、これらの霊場を札所とも呼びました。現在では、参拝の証として各札所から“ご朱印”を授かることが一般的です。
大聖院は、准秩父観音霊場の第24番札所にあたり、境内にあるお堂(本堂に向って左手前にある釈迦堂)で、十一面観音のお厨子の扉を開きます。
お開帳の期間は平成26年4月10~30日の21日間(開帳時間は午前9時から午後5時まで)となっております。
観音さまのご利益をいただくため、あるいは自分を見つめるため、または春の季節を楽しむため、または新しい出会いを求めて・・・などなど、参拝の旅に出発するきっかけは人それぞれかもしれません。
12年に一度の貴重な機会に、ぜひともご参拝いただくことをお勧めいたします。
(副住職孝善)